電気自動車(EV)などの新車購入費用を補助する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」が10月末にも打ち切られる。政府は補正予算の編成を検討中だが、成立時期によっては購入者の一部が補助金の申請資格を失う可能性がある。EVの販売に水を差さないためにも、政府と販売現場にはきめ細かな対応が求められそうだ。
今年度のCEV補助金は2021年度補正予算分を含め、約430億円が手当てされている。補助事業の実務を担う次世代自動車振興センター(堀洋一代表理事)によると、7月22日時点で補助金残高は約177億円。最大55万円の補助金を受け取れる日産自動車「サクラ」、三菱自動車「eKクロスEV」の軽EVの販売が好調なためで、このままのペースで予算の消化が進むと10月末にも補助金申請の受付が打ち切られることになる。
顧客や販売現場の関心事は、22年度補正予算による補助制度の再開時期だ。18年度のCEV補助金では、同年12月17日から31日までの約2週間、予算切れで補助金が手当てされない「空白期間」が生じた。17年秋に日産が投入した新型「リーフ」の販売増で、EV全体の年間販売台数が前年の1.5倍以上にふくらんだためだ。
経済産業省は、「当時は比較的(空白が)短期間だったため、財政措置はしなかった」(製造産業局自動車課)と振り返る。一部の販売店では納車時期をずらすなどしたが、翌年1月から新たな予算が充てられたこともあり、販売現場に大きな混乱はなかった。
政府は22年度補正予算の編成を検討しているが、焦点は成立時期だ。CEV補助金の支給の条件として、車両の登録・届け出から1カ月以内の申請が必要になる。見込み通りCEV補助金が10月末になくなり、補正予算の成立が仮に12月以降になった場合、空白期間が1カ月を超え、登録・届出日によっては補助金を申請できない顧客が出てくる。補助金の遡及(そきゅう)適用といった救済措置は短期間で整えることが難しく、販売現場でのきめ細かな対応が求められる。
すでに一部の販売会社は補助金切れをにらみ、販促ツールの表記を変えたり、商談時の説明を徹底したりしている。補助金の支給対象から外れる可能性も考慮し、顧客から同意書を取得する販社もある。
経産省としても、予算残高を頻繁に更新し、販売店が対応しやすいよう配慮していく考えだ。「空白期間が生じることもあり得る。販売現場への影響をできるだけ減らせるよう努めていく」(同)。
ただ、今後EV販売が大幅に伸長すれば、今回のような事態が発生する可能性も考えられる。CEV補助金の増額に加え、申請期間の延長やスキームの変更など制度自体を見直す必要も出てきそうだ。
(村田 浩子)
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月22日号より